英検準1級の二次試験でいちばん手こずるのが、4コマのナレーションです。1分で準備して2分間話す。やることは決まっているのに、絵を見ても何から口に出せばいいのか分からない、という状態になりがちです。
先に結論を書きます。4コマは「4枚の絵を英語で説明する問題」ではなく、「4枚から1本の話を組み立てて伝える問題」です。この見方に切り替えるだけで、話す材料は一気に増えます。
4枚の絵ではなく、1本の話として見る
同じ4コマでも、見方によって出てくる言葉が変わります。
1コマ目
絵を説明する見方
A woman is standing at a station.
話として見る見方
運賃が上がると知って、女性が困っている(=話の出発点)
コマの関係
絵を説明する見方
次の絵に進むだけ
話として見る見方
前のコマを受けて、人物が何かを決めた・何かが起きた
話せる量
絵を説明する見方
1コマ1文で終わり、2分が埋まらない
話として見る見方
行動・状況・反応が出てくるので自然に伸びる
左の見方だと、絵の中の物の名前を並べるだけになりがちです。右の見方に変えると、なぜそうなったのか、その結果どうなったのかを話す材料として見つけやすくなります。
見るべきは5つだけ
4枚をただ見るのではなく、探す対象を決めてから見てください。この5つが見つかれば、話の骨格は完成します。
WHO|誰の話か
4コマを通して追う中心人物を1人決めます。脇役は、必要になったときだけ触れます。
SITUATION|最初はどんな状態か
1コマ目で何が起きているか。たいていは、何かを見た・聞いた・困っているという出発点です。
CHANGE|何が変わったか
人物が決めたこと、始めたこと。ここが話の動き出しになります。
ACTION|実際に何をしたか
行動の中身と、その途中で起きた予想外のこと。話の山になる部分です。
RESULT|最後どうなったか
うまくいったのか、別の結果になったのか。ここが決まると話の着地が決まります。
Note
すべての4コマがこの形にきれいに収まるとは限りません。3コマ目で問題が起きず、順調に進む絵もあります。これはテンプレートではなく、絵の関係を早く見つけるための探し物リストとして使ってください。
最初と最後を、先に見る
1コマ目から順に理解しようとすると、途中で迷いやすくなります。先に1コマ目と4コマ目だけを見て、「最初はこうだったのが、最後はこうなった」という変化を押さえてください。
出発点と着地が分かっていれば、間の2枚は「その間に何が起きたのか」を埋める作業になります。2コマ目以降で探すのは、前のコマと比べて新しく起きたこと1つだけ。全部を描写しようとすると時間も語彙も足りません。
新しいことが「人物が決めたこと」なら decided to ...、「始めたこと」なら started -ing で表せます。雨が降り始めたなら It began to rain.、突然何かが起きたなら Suddenly, ... happened. のように、出来事に合う形を選びます。何が変わったかを先に整理すると、使う表現を選びやすくなります。
1分間で見る順番
準備時間は、見る順番を固定しておくと安定します。英文は作らず、ここまでで止めてください。
- 1
4枚を一度ざっと見る
細部には入らず、全体がどんな話なのかだけをつかみます。
- 2
中心人物を決める
誰を主語にして4コマを通すかを決めます。ここがぶれると話も崩れます。
- 3
1コマ目と4コマ目を確認する
出発点と着地を押さえます。これで話の方向が決まります。
- 4
途中の変化を確認する
2コマ目で何を決め、3コマ目で何が起きたのか。新しいことを1つずつ拾います。
- 5
つなぎ方を決める
コマの間が時間の経過なのか、逆の展開なのか、結果なのかを決めます。
- 6
キーワードを頭に置く
文にはせず、覚えられる範囲の少数のキーワードに絞ります。
実例:1分間の頭の中を、そのまま見せる
オリジナルの4コマで、ここまでの手順を通してみます。設定は次のとおりです。1コマ目、女性が駅で運賃の値上げのお知らせを見ている。2コマ目、自転車通勤を決めて自転車を買う。3コマ目、ある朝、走っている途中で激しい雨が降り出す。4コマ目、ずぶ濡れで出社し、がっかりしている。
- WHO
a woman — office worker
- SITUATION
notice at station → train fares going up
- CHANGE
decided to cycle → bought a bike
- ACTION
riding to work → heavy rain started
- RESULT
arrived soaking wet → disappointed
英文はひとつも作っていません。覚える情報を少数のキーワードに絞ることで、全文を保持するより負担を抑えやすくなります。そして矢印がそのままコマ間のつながりになっています。
その骨格から、2分間のナレーションへ
書き出しはカードに印刷された言い出し部分を使うので、自分で考える必要はありません。あとは上のメモを順にたどり、絵の情報量に応じて行動・状況・反応を必要な範囲で補います。
- 1コマ目
One day, a woman was looking at a notice at the station. It said that train fares were going up, and she did not look happy about it.
- 2コマ目
That weekend, she decided to cycle to work instead. She went to a shop and bought a new bicycle, and she seemed excited about her plan.
- 3コマ目
A few days later, however, it began to rain heavily while she was riding to the office. She had no raincoat with her, so she just kept going.
- 4コマ目
When she finally arrived at work, her clothes were completely wet. She looked disappointed, and she began to wonder if cycling every day was really a good idea.
難しい単語に頼らなくても、出来事の流れを伝えられます。実際にかかる時間は話速によって変わるため、録音して2分に合う長さへ調整してください。ここで大事なのは、この英文を覚えることではなく、メモからこの形を自分で作れるようになることです。同じ4コマでも、言い方は人によって違ってかまいません。
1コマを一文で終わらせない:行動+状況+反応
A man went to a store. で終わると、そこで話が止まります。1コマに3つの要素を乗せると考えると、自然に伸びます。
- Action|人物がしたこと
決めた、買った、出かけた、始めた。コマの中心になる動作です。
- Situation|周囲で起きていること
天気、混雑、相手の様子、時間。行動を取り巻く状況です。
- Reaction|人物の反応
驚いた、困った、喜んだ。絵の表情から読み取れる範囲で加えます。
全部のコマに3つ入れる必要はありません。1コマ目は Action と Situation だけ、3コマ目は3つ全部、というように濃淡をつけて構いません。
推測はどこまで許されるか
いちばん迷うのがここです。線引きの基準は単純で、「絵を見た人が同じように読み取れるか」です。
足してよい|表情から読める気持ち
明らかに困った顔なら worried、笑っていれば pleased。誰が見てもそう見えるなら問題ありません。
足してよい|行動から分かる意図
店に入って自転車を見ているなら、買おうとしているのだと読めます。
避けたい|絵にない過去や関係
「この人は昔から環境問題に関心があった」のような背景は、描かれていなければ言わないほうが安全です。
避けたい|数字や固有名詞の創作
値段や日付を具体的に作ると、絵と食い違うリスクだけが増えます。
気持ちを入れるときは、理由とセットにすると自然になります。She looked worried because it started to rain. のように、なぜそう見えるのかまで言えると描写に根拠が出ます。
時制とつなぎ方は、話し始める前に決める
話しながら決めようとすると、過去形と現在形が混ざります。準備の最後に「過去の話として語る」と決めてしまえば、迷いが消えます。
進行中のことは過去進行形、それより前に起きたことは過去完了と使い分けられれば十分です。無理に完了形を多用して文が崩れるくらいなら、過去形でそろえて話し切るほうが伝わります。公式に「この時制で話すこと」と決められているわけではないので、一貫していることを優先してください。
つなぎ表現も同じです。One day、Later、A few days later、However、Meanwhile、As a result、Eventually。覚える数を増やすより、コマの間が時間の経過なのか逆の展開なのか結果なのかを判断できることが大事です。関係が合っていない接続表現は、入れないほうがまだ伝わります。
話が短くなる原因と、話しすぎの落とし穴
2分に届かないときによく見られる原因として、次の6つがあります。
各コマを一文で終える
各コマを一文だけで終えると情報が不足しやすくなります。行動・状況・反応から、絵に合う情報を必要な範囲で加えます。
見える物しか説明しない
物の名前を並べても話になりません。人物が何をしたかを中心にします。
人物の反応を入れない
表情から読めることを足すだけで、1コマあたり1文増えます。
コマ間の変化を言わない
つなぎがないと4つの独立した説明になります。時間・逆接・結果のどれかを毎回言葉にします。
英文を完璧に作ろうとする
頭の中で文を仕上げてから話すと、沈黙が積み重なります。話しながら組み立ててください。
時間を測っていない
2分の感覚がないと配分を誤ります。練習では毎回タイマーを使います。
Note
逆に、話しすぎも避けたいところです。2分を埋めるために絵にない設定を大量に作る、1コマだけを長く語る、関係のない背景説明を足す。どれも「4コマ全体を分かりやすく伝える」という目的から外れます。時間を埋めることが目的ではありません。
同じ4コマを、2回話す
同じ4コマを改善して話し直す練習も取り入れてください。1回目は本番条件で話して録音し、聞き返して、どのコマが薄かったかを1つだけ特定します。そこを直して、同じ4コマでもう一度話します。
初見の4コマで対応力を広げる練習と、同じ4コマを改善して話し直す練習を組み合わせます。1回目と2回目を比べると、修正した内容を実際の発話に反映できたか確認できます。
自分のナレーションを確認する5項目
録音を聞き返すときは、観点を決めてから聞いてください。全部を同時に見ようとすると、どれも見落とします。
① Story
4コマが1本の話としてつながっているか。聞いただけで話の筋が分かるか。
② Content
重要な出来事を落としていないか。とくに3コマ目の山を飛ばしていないか。
③ Language
文法や語彙が大きく崩れていないか。時制が途中で入れ替わっていないか。
④ Fluency
長い沈黙が何度もないか。詰まったときに言い換えて進めているか。
⑤ Time
4コマ全体を時間内に話せたか。1コマ目に時間を使いすぎていないか。
Note
これは公式の採点項目ではなく、自己チェックのための観点です。正式な評価の観点については、二次試験全体を扱った記事と公式サイトをご確認ください。
練習サイクルと、そのあとのQ&A
1枚の4コマを、次の流れで使い切ってください。ポイントは、STEP 6のあとに必ず戻ることです。
- 1
初めて見る4コマを用意する
問題集でもアプリでも構いません。事前に解答例を読まないこと。
- 2
1分でストーリーを整理する
WHO / SITUATION / CHANGE / ACTION / RESULT をキーワードで押さえます。
- 3
2分測ってナレーションする
途中で止めず、詰まっても言い換えて走り切ります。録音します。
- 4
録音を聞き返す
上の5項目のうち1〜2つに絞って確認します。
- 5
薄かったコマを特定する
どのコマが一文で終わっていたかを見つけます。そこが次の改善点です。
- 6
より自然な言い方を確認する
改善例があれば読み、自分の言い方との差を見ます。暗記はしません。
- 7
同じ4コマで、もう一度1分準備する
骨格を組み直すところからやり直します。
- 8
もう一度2分間話す
1回目との差を確認します。ここまでで1枚が完了です。
本番では、ナレーションが終わったあとに質問が続きます。練習でも、ナレーションのあとにその4コマのテーマについて自分の考えを口に出すところまでやると、本番に近づきます。Q&Aの答え方や面接全体の流れについては、二次試験全体を扱った記事で詳しく説明しています。
やってはいけない10のこと
4枚を別々の絵として説明する
話にならず、つなぎ言葉も出てきません。最初と最後の変化から見てください。
見える物をすべて列挙する
物を列挙するだけでは、4コマの展開を十分に伝えられません。人物の行動と、話に必要な物に絞ります。
各コマを一文で終える
各コマを一文だけで終えず、行動・状況・反応から必要な情報を加えます。
1分で完全な英文を作る
覚えきれません。キーワードだけに。
難しい単語を探して止まる
すぐに出てこなければ、知っている語で言い換えて進みます。
絵にない設定を大量に作る
読み取れる範囲にとどめる。
時制が何度も入れ替わる
話す前に過去で通すと決めておく。
接続表現を入れること自体が目的になる
関係に合っていない However は混乱を招きます。関係を見てから選びます。
1コマだけ長く話しすぎる
後半が駆け足になります。配分は練習で体に入れてください。
一度話しただけで次へ進む
改善点を決めて、同じ4コマでもう一度話します。
本番直前のチェックリスト
Point
4コマを見る前に、これだけ思い出す
- 4枚を1本の話として見る
- 中心人物を1人決める
- 1コマ目と4コマ目の変化を先に押さえる
- 各コマで「新しく起きたこと」を1つ探す
- 1分では英文を作らず、キーワードだけにする
- 行動だけでなく、状況と反応も入れる
- 過去の話として、時制を通す
- 書き出しはカードの言い出し部分から始める
まとめ
4枚を別々に説明するのではなく、1本の話として伝える。この切り替えによって、出来事の理由や結果を話す材料として見つけやすくなります。次に4コマを渡されたら、中心人物を決め、最初と最後の変化を押さえるところから始めてください。
Note
本記事は学習方法をまとめたものであり、合格を保証するものではありません。二次試験の形式・時間・評価に関する最新情報は日本英語検定協会の公式サイトをご確認ください。「英検」は公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。
参考資料
よくある質問
- 4コマナレーションの準備時間と話す時間はどれくらいですか?
- 考慮時間は1分間、ナレーションは2分間です。問題カードには指示文と4コマのイラストが印刷されており、ナレーションはカードに印刷された言い出し部分を使って始めます。なお面接中はメモを取ることができません。
- 絵を見ても何から話せばいいか分かりません。
- 1コマ目から順に理解しようとせず、先に1コマ目と4コマ目だけを見てください。「最初はこうだったのが、最後はこうなった」という変化が分かれば、間の2枚は「その間に何が起きたか」を埋める作業になります。中心人物を1人決めるのも先にやっておきます。
- 2分間話し続けられません。
- 各コマを一文だけで終えていることが原因の一つです。人物の行動・周囲の状況・人物の反応から、絵に合う情報を必要な範囲で加えてください。適切な文数は話速や絵の情報量によって変わります。コマ間を時間・逆接・結果などでつなぐことも大切です。
- 絵に描かれていないことを、どこまで言っていいですか?
- 基準は「絵を見た人が同じように読み取れるか」です。困った表情から worried、店で自転車を見ている様子から買おうとしている、といった推測は自然です。一方で、絵にない過去の経緯や人物関係、具体的な数字や日付は作らないほうが安全です。
- 時制は過去形で統一すべきですか?
- 公式に時制が指定されているわけではありません。ただ、過去の出来事を語る形になるため、過去の時制で通すのが自然です。大事なのは一貫していることで、進行中のことは過去進行形、それより前のことは過去完了と使い分けられれば十分です。無理に完了形を多用して文が崩れるなら、過去形でそろえるほうが伝わります。