英検1級のライティングは、書いた量に比例して点が伸びるとは限りません。難しい単語を並べても、理由を3つそろえても、点数が伸び悩む答案にはだいたい共通の原因があります。多くは語彙力ではなく、「何を書くか」を決める前に書き始めてしまっていることです。
この記事では、意見論述(英作文)を中心に、求められている力・段落ごとの中身・理由の出し方・よくある失敗・練習の回し方を順番に整理します。読み終えたときに、次の1本をどう書けばいいかが具体的に決まっている状態を目指します。
英検1級ライティングの出題形式(2024年度リニューアル以降)
2024年度のリニューアル以降、1級のライティングは「英文要約」と「意見論述」の2問構成です。意見論述では、与えられたTOPICに対して自分の立場を決め、3つの理由を挙げ、Introduction / Main body / Conclusion の3部構成で200〜240語程度にまとめます。
準1級や2級と違い、1級では理由のヒントとなるPOINTSが与えられません。つまり「何を理由にするか」を自分で決めるところから試験が始まります。この記事でBody Paragraphの作り方に多くを割いているのは、そこが1級の実質的な勝負どころだからです。
Point
意見論述で求められているかたち
- TOPICに対して、賛成か反対かの立場をはっきり決める
- その立場を支える理由を3つ挙げる
- Introduction / Main body / Conclusion の3部構成で書く
- 語数の目安は200〜240語
- 理由のヒント(POINTS)は与えられない
採点は内容・構成・語彙・文法の4観点で、1級は各観点0〜8点、1問あたり32点。要約と合わせた合計がライティングのスコアになります。4観点が同じ重みだという点は、対策を考えるうえで重要です。語彙は4つある評価観点の1つであり、内容・構成・文法もバランスよく対策する必要があります。
Note
出題形式・語数・採点の詳細は変更される可能性があります。受験前には必ず公益財団法人 日本英語検定協会の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
英検1級ライティングで本当に求められている力
「1級なんだから、難しい単語を使わないと」と考えて、無理に硬い語を詰め込んだ答案をよく見かけます。ところが4観点の内訳を見ると、語彙はそのうちのひとつでしかありません。まず、それぞれの観点が何を見ているのかを分けて捉えます。
内容 ─ 立場が明確で、理由がTOPICに正面から答えているか
賛成か反対かがはっきりしていること。3つの理由がTOPICの問いに直接答えていること。そしてそれぞれの理由が、一言で終わらずに説明されていること。一般論だけで終わる答案は、ここで止まります。
構成 ─ 読み手が迷わずに追えるか
3部構成が守られているか、各段落の役割がはっきりしているか、話の順序に無理がないか。接続表現をいくつ使ったかではなく、段落と段落の関係が読み取れるかどうかが評価されます。
語彙 ─ 難しさではなく、正確さと幅
言いたいことにぴたりと合う語を選べているか。同じ語の繰り返しを避けられているか。意味が少しずれた難単語を使うと、かえって減点方向に働きます。確実に使いこなせる語で正確に書くほうが安全です。
文法 ─ 正確さと、文構造の幅
短文の羅列でも、崩れた長文でも点は伸びません。関係詞や分詞、条件節などを混ぜながら、破綻せずに書き切れることが求められます。背伸びした構文で崩れるより、確実な構文を組み合わせるほうが評価されます。
この4つのうち、独学でいちばん伸ばしにくいのが内容と構成です。語彙と文法は参考書や単語帳で補えますが、「自分の論理が読み手に伝わっているか」は自分では判断しづらい。だからこそ、書いたあとに他人(または採点の仕組み)の目を通す工程が要ります。
基本の文章構成 ─ まず型を持つ
本番で最初にやることは、英語を書くことではなく、5つの箱に何を入れるかを決めることです。全体像はこうなります。
- Introduction35〜45語
TOPICを自分の言葉で言い換え、立場を明言し、これから話す3つの理由を予告する。
- Body 145〜55語
1つ目の理由。主張 → 理由 → 説明 → 帰結の順に展開する。
- Body 245〜55語
2つ目の理由。Body 1とは違う観点から選ぶ。
- Body 345〜55語
3つ目の理由。ここも別の観点。もっとも説得力のあるものを最後に置いてもよい。
- Conclusion30〜40語
立場を別の言い方で述べ直し、3つの理由を短くまとめる。新しい情報は足さない。
語数配分はあくまで目安ですが、200〜240語という枠のなかでBodyひとつに使えるのは50語前後、英文にして3〜4文です。ここを意識せずに書き始めると、Body 1に100語使ってBody 3が2文で終わる、という崩れ方をします。実際、語数オーバーの答案の多くは最初の段落が長すぎるだけです。
Point
各段落で「何を書くのか」
- Introduction:TOPICの言い換え → 自分の立場 → 3つの理由の予告
- Body:主張(この段落の結論)→ なぜそう言えるか → 具体化 → だから立場が支持される
- Conclusion:立場の再確認 → 3つの理由を別の語でまとめる
Introductionの書き方
Introductionの役割は2つだけです。立場をはっきりさせること、そしてこれから何を3つ話すのかを予告すること。それ以外は、200〜240語の枠のなかでは贅沢です。ここでは例として、Governments should invest more in renewable energy. というTOPICで考えてみます。
避けたい書き出し
Nowadays, energy is a very important issue all over the world. There are many different opinions about this topic. In this essay, I will discuss whether governments should invest more in renewable energy.
3文・約35語を使って、TOPICの中身にも自分の立場にも触れていません。「今日、〜は重要な問題である」で始まる導入は、どのTOPICにも当てはまってしまう分、内容の点につながりません。
こう考える
Governments today must decide where to direct limited energy budgets. In my view, they should invest more in renewable energy, for three reasons: national security, long-term cost, and public health.
2文で立場が確定し、3つの理由の見出しまで示されています。読み手はこの時点で残りの展開を予測でき、構成の評価が上がります。
テンプレートを覚えること自体は悪くありません。型があれば、本番で構成に迷う時間を内容を考える時間に回せます。問題は、テンプレートの空欄に入れる中身を考える練習をしないまま本番を迎えることです。型は考える時間を確保するための道具であって、型を書き写した時点で点が入るわけではありません。
Body Paragraphの作り方(ここで差がつく)
「理由が思いつかない」「書き始めたけれど広げられない」。1級のライティングでもっとも多いつまずきです。原因はたいてい同じで、理由を一言で終わらせているからです。理由は文ではなく、4手の展開だと考えると解決します。
主張 → 理由 → 説明 → 帰結の4手で書く
- 主張
First, renewable energy strengthens national security.
- 理由
Countries that depend on imported fossil fuels are exposed to sudden price shocks and to political pressure from exporting states.
- 説明
Solar and wind resources, by contrast, are generated domestically and cannot be cut off by a foreign government.
- 帰結
Investing in them therefore reduces a nation's dependence on forces it cannot control.
特別な単語は使っていません。それでも、主張がどこから来ているのかを読み手が追えます。1級のBodyに必要なのは語彙の難しさより、この4手が途切れないことです。
4手のうち、抜けやすいのは3番目の説明です。「安全保障が強化される」で終えてしまうと、採点者から見れば主張の繰り返しにしか見えません。誰にとって、どういう場面で、どう変わるのか。1文足すだけで、内容の評価は変わります。
理由が思いつかないときは、視点を切り替える
理由は「思いつく」ものだと考えると止まります。「どの立場から見るか」を切り替える作業だと考えると出てきます。TOPICを読んだら、次の観点を順に当ててみてください。
- 経済 ─ コスト、雇用、産業競争力、税
- 個人 ─ 健康、時間、生活の質、選択の自由
- 社会 ─ 安全、格差、教育、地域
- 国家・制度 ─ 政策、法律、国際関係
- 長期・環境 ─ 次世代への影響、持続可能性
- 倫理・権利 ─ 公平性、尊厳、責任の所在
6つ当てはめて、そのうち「2文以上書けそうなもの」を3つ選びます。思いついた順ではなく、書けそうな順で選ぶのがコツです。強い主張でも、説明が続かなければ本番では使えません。
3つのBodyは、違う土俵から選ぶ
よくあるのが、理由1「経済的にプラスになる」理由2「企業の利益が増える」理由3「雇用が生まれる」というパターン。書いている本人は3つ挙げたつもりでも、読み手には同じ理由を3回言い換えただけに見えます。上の観点リストから、なるべく離れた3つを選ぶだけで、この失敗は防げます。
順序も少しだけ意識します。もっとも説得力があると自分が思う理由を最後のBodyに置くと、Conclusionへの流れが自然になります。迷ったら、具体的に説明しやすい順に並べれば十分です。
Conclusionの書き方
Conclusionでやってはいけないのは、Introductionをほぼそのまま貼り直すことです。同じ語をそのまま繰り返すと、語彙の評価にも構成の評価にも響きます。やることは2つだけです。立場を別の言い方で述べ直すことと、3つの理由をBodyとは違う語で短くまとめることです。
- 立場の再確認
For these reasons, greater public investment in renewable energy is justified.
- 3つの理由を別の語でまとめる
A supply that cannot be cut off from abroad, costs that fall over time, and cleaner air for citizens together outweigh the initial expense.
national security → a supply that cannot be cut off from abroad、public health → cleaner air for citizens のように、Bodyで使った語を言い換えています。新しい理由や統計をここで持ち出す必要はありません。
残り時間が少ないときほど、Conclusionを削りたくなります。ただし3部構成は明示的に求められている要件なので、たとえ1文でも必ず置いてください。「For these reasons, 〜」の1文があるかないかで、構成の印象は変わります。
高得点を狙うためのポイント
最初の1文で立場に近づく
一般論から入る導入は語数を食うだけです。TOPICへの答えを早く出すほど、Bodyに使える語数が増えます。
Bodyは別々の土俵から選ぶ
経済・健康・制度など、離れた観点から3つ選びます。似た理由を3つ並べると、実質1つの理由として読まれます。
抽象論で終わらせない
「便利になる」「良い影響がある」で止めず、誰にどう影響するのかを1文足します。ここが内容の評価を分けます。
接続表現は必要な場所だけ
Moreover や Furthermore を機械的に並べても構成の点にはなりません。実際に「追加」なのか「対比」なのかを見て選びます。
難単語より正確な表現
意味が少しずれた難単語は減点になり得ます。確実に使いこなせる語で正確に書くほうが、語彙の評価は安定します。
時間配分を先に決めておく
要約と意見論述の2問があります。どちらに何分かけるかを決め、練習でも必ずその時間で書き切ります。
もうひとつ、地味ですが効くのが「書く前の2分」です。日本語で理由を3つメモしてから書き始めるだけで、途中で立場が揺れたり、Body 3が思いつかずに止まったりする事故がほぼなくなります。制限時間内での2分は高くつくように感じますが、書き直す時間よりずっと安く済みます。
よくある失敗と、その直し方
立場が途中で揺れる
「賛成だが、一方でこういう面もある」と書き進めるうちに、結局どちらなのか分からなくなる答案です。意見論述はバランスの取れた論評ではなく、立場を選んで支える文章です。譲歩を入れるなら1文以内にとどめ、必ず自分の立場に戻す。「もっとも公平な答案」を目指すと、内容の点は下がります。
3つの理由が、実質1つになっている
本人は3つ挙げたつもりでも、読み手には同じ話に見えるパターンです。防ぎ方は単純で、書く前に3つの理由を日本語でメモし、「これは同じ土俵か」と自分に問うこと。30秒で防げます。かぶっていたら、上の観点リストから遠いものに差し替えます。
具体化がなく、最後まで一般論
It has many benefits. や It is good for society. だけが並ぶ答案です。統計や固有名詞を覚えていなくても構いません。「輸入に頼る国は価格変動の影響を受けやすい」といった、論理的に成り立つ具体化で十分です。むしろ、思い出せない数字を無理に書くほうがリスクがあります。
語数が大きくオーバーする / 足りない
240語を大きく超えるのは、たいてい導入かBody 1が長すぎるためです。逆に足りない場合は、4手のうち「説明」が抜けています。普段から Introduction 40語・Body 各50語・Conclusion 35語のような配分を体に入れておくと、本番で数えなくてもおおよそ収まるようになります。
見直しの時間を残していない
三単現のs、冠詞、時制、単複。減点されるのはたいてい、知らない文法ではなく知っている文法です。最後の2〜3分を必ず見直しに残してください。内容を足す1文より、ミスを2つ消すほうが点になることは珍しくありません。
効果的な勉強法 ─ 1本を最後まで回し切る
1級のライティングは、新しいトピックを何本書いたかではなく、1本をどこまで直せたかで伸びます。次の4ステップを1セットとして回してください。
- 1
トピックを読み、日本語で理由を3つ書き出す(5分)
いきなり英語で書き始めない。まず日本語で、違う観点から3つ。ここは英語力ではなく発想の練習なので、日本語で構いません。同じ土俵になっていないかを確認します。
- 2
時間を測って英語で書く(25〜30分)
本番と同じ条件で。辞書は使いません。知らない語に出会ったら、知っている語で言い換える。この言い換えの練習が、そのまま本番の語彙対策になります。
- 3
採点・添削を受ける(できればその日のうちに)
書きっぱなしがいちばんもったいない工程です。内容・構成・語彙・文法のどこで落ちたのかを観点ごとに特定します。「なんとなく良くない」で終わらせないことが重要です。
- 4
指摘を反映した改善版を、同じトピックで書き直す
1回目と2回目の差が、そのまま伸びしろです。新しいトピックに移るのはその後で構いません。改善版まで書いて、初めて1本が完了します。
新しいトピックを10本書きっぱなしにするより、3本を改善版まで書いたほうが伸びます。週2本でも、STEP 4まで到達していれば十分です。逆にSTEP 3で止まっている限り、本数を増やしても同じ失点を繰り返すことになります。
つまずきやすいのはSTEP 3です。学校や塾で見てもらえる環境があるなら、それがいちばん確実です。ない場合は、観点別に採点が返ってくる仕組みを用意しておくと、STEP 4に進めるようになります。
要約問題も、同じ設計で対策する
意見論述と並んで出題される英文要約は、約300語の英文を90〜110語にまとめる問題です。求められる力は意見論述とかなり違います。自分の意見を足さないこと、原文の表現をそのまま写さずに言い換えること、そして原文のどの情報を落とすかを判断すること。この3点が中心です。
対策の回し方は意見論述と同じで構いません。原文を読んで残す情報を選ぶ → 時間を測って書く → 採点を受ける → 書き直す。特に「原文からのコピーになっていないか」は自分では気づきにくいので、チェックの仕組みを持っておくと安心です。
まとめ ─ 次の1本で何をするか
1級の意見論述で伸びない原因の多くは、語彙力ではなく設計にあります。立場を先に決め、離れた3つの観点から理由を選び、Bodyごとに主張・理由・説明・帰結の4手を通す。この3つを守るだけで、内容と構成の評価は変わります。
そのうえで、書いた答案を必ず採点し、同じトピックで書き直す。次に書く1本は、新しいトピックでなくて構いません。前回の答案を、指摘を踏まえて書き直すところから始めてみてください。
Note
本記事は学習方法をまとめたものであり、合格を保証するものではありません。出題形式・採点基準の最新情報は日本英語検定協会の公式サイトをご確認ください。「英検」は公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。
参考資料
よくある質問
- 英検1級の英作文は何語書けばいいですか?
- 意見論述は200〜240語程度が目安です。英文要約は90〜110語で書きます。語数を大きく超える場合は、導入か1つ目のBodyが長すぎることが多いので、配分を見直してください。
- 理由は必ず3つ必要ですか?
- 意見論述では3つの理由を挙げて立場を支えることが求められます。3つとも同じ観点から選ぶと実質1つの理由として読まれてしまうため、経済・健康・制度など、離れた観点から選ぶことをおすすめします。
- テンプレートは覚えたほうがいいですか?
- 型を持っておくこと自体は有効です。構成に迷う時間を減らし、内容を考える時間に回せます。ただしテンプレートを書き写しただけでは内容の評価は上がらないので、空欄に入れる中身を考える練習とセットで使ってください。
- 難しい単語を使ったほうが有利ですか?
- 語彙は難しさではなく、正確さと幅で評価されます。意味が少しずれた難単語はかえって減点になり得ます。確実に使いこなせる語で正確に書き、同じ語の繰り返しを避けることを優先してください。
- 独学でライティングの点数を上げるにはどうすればいいですか?
- 書きっぱなしにしないことが最大のポイントです。日本語で理由を3つ出す → 時間を測って書く → 観点別に採点・添削を受ける → 同じトピックで改善版を書く、という4ステップを1セットとして回してください。新しいトピックの本数を増やすより効果的です。