英検1級のリーディングは、単語を覚えれば読める試験でも、全文をきれいな日本語に訳せれば解ける試験でもありません。実際に要るのは、語彙、文構造を正確に取る力、段落ごとの論理を追う力、必要な情報を見つける力、そしてそれを制限時間内に処理する力です。
この記事では、語彙の伸ばし方から長文の読み方、内容一致問題の解き方、時間配分、復習のやり方、そして日々の学習サイクルまでを順に扱います。単語帳は進んでいるのにReadingの点が動かない、という人ほど読む意味があるはずです。
英検1級リーディングの構成と時間
まず全体像を確認します。1級の一次試験は、リーディングとライティングを合わせて100分、そのあとリスニングが約35分です。リーディングは次の3形式、合計35問で構成されています。
- 短文の語句空所補充22問
短文・会話文の空所に、文脈に合う語句を4つの選択肢から選ぶ。いわゆる語彙問題。
- 長文の語句空所補充6問
説明文・評論文などのパッセージの空所に、文脈に合う語句を補う。
- 長文の内容一致選択7問
パッセージの内容に関する質問に答える。
数字を見ると、35問のうち22問が語彙問題です。ここだけで6割を占めます。一方で100分という枠にはライティングの2問(英文要約と英作文)も入るため、リーディングに使える時間は自動的に決まってきます。語彙問題をどれだけ速く確実に処理できるかが、そのまま長文に回せる時間を決める、という構造になっています。
Note
出題形式・問題数・試験時間は変更される可能性があります。受験前には必ず公益財団法人 日本英語検定協会の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
リーディングで求められる4つの力
「英語力が足りない」で片づけると、次に何をすればいいかが決まりません。1級のReadingで必要な力は、4つに分けて考えると対策しやすくなります。
語彙力
選択肢や本文の重要語を理解するための土台。ここが欠けていると、他の力があっても答えにたどり着けません。
構文把握力
長く複雑な英文でも、主語・動詞・修飾関係を崩さずに取る力。一文が3行あっても迷子にならないこと。
論理把握力
筆者の主張、対比、原因と結果、具体例の関係を追う力。内容一致問題の出来はほぼここで決まります。
情報処理力
すべてを同じ速度で読むのではなく、設問に必要な情報を優先して処理する力。時間切れを防ぐのはこの力です。
伸ばす順番に決まりはありませんが、点が動かないときは、自分がどれで詰まっているかを見極めるのが先です。語彙が原因なのに読み方を変えても点は動きませんし、その逆も同じです。
語彙はReadingの土台になる
35問中22問が語彙問題である以上、1級で語彙の比重が大きいのは事実です。ただ、単語帳を丸暗記すればReadingが完成するわけではありません。単語帳で覚えた状態と、試験で使える状態のあいだには段階があります。
- 単語を知る
単語帳などで、語形と代表的な意味を結びつける。ここは暗記の作業。
- 文中で意味を判断する
短文の中で、その語がどの意味で使われているかを選べるようにする。語彙問題で問われるのはこの段階。
- 長文で何度も出会う
実際の文章の中で繰り返し遭遇し、考えずに処理できるようにする。読解速度に効いてくるのはここ。
単語帳だけを回していると、1段目から2段目に上がりません。1級の語彙問題は、単語の意味を知っているかではなく、文脈に合う語を選べるかを見ているからです。長文演習は、そのまま3段目の練習になります。
単語は覚えているのに長文が読めない理由
かなり多い相談です。原因はいくつかありますが、大事なのは「語彙不足」と「読解力不足」を混同しないこと。よくある原因を挙げます。
- 第一義しか知らない(覚えた意味では文脈が通らないのに、そこで止まってしまう)
- 熟語やコロケーションで覚えていない(単語単位では分かるのに、組み合わせの意味が取れない)
- 文構造を取り違えている(語はすべて分かるのに、どれが主語でどれが述語か決められない)
- 重要語と細部を同じ重さで読んでいる(固有名詞や修飾語に時間を使い、主張を見落とす)
- 段落同士の関係を追っていない(一文ずつは分かるが、全体で何を言っているかは答えられない)
原因を見分ける一つの目安は、読めなかった箇所を辞書を使わずにもう一度読むことです。読み直して文の構造や流れがつかめるなら読み方を見直す余地があり、知らない語が原因で意味を取れないなら語彙を補う必要があります。実際には複数の原因が重なることもありますが、復習のたびに主な原因を切り分けておくと、次に何を優先すべきかを決めやすくなります。
全文をきれいに訳そうとしない
1級の長文で、全文を自然な日本語に訳す作業は本番では要りません。訳を作るには時間がかかりますし、訳せたからといって設問に答えられるとは限らないからです。読みながら追うべきは、次のような関係です。
- 誰が、何について書いているのか
- 筆者は何を主張しているのか
- 何と何が対比されているのか
- 原因と結果はどれとどれか
- この具体例は、どの主張を支えているのか
とはいえ「精読は不要」という意味ではありません。本番で速く処理できるのは、普段の学習で一文ずつ構造を確認してきた人です。訳す練習は本番用ではなく、読解の精度を上げるための作業として、復習の段階でやるものだと考えてください。
長い英文は「骨格」から見る
一文が3〜4行ある英文を、頭から順に意味を積み上げて読もうとすると途中で崩れます。先に骨格(主語・動詞・目的語)を確定させてから、修飾部分を足していくほうが確実です。
- 元の文
The policy, which was introduced in response to growing public concern over air quality, has significantly reduced emissions in urban areas.
- 骨格だけ
The policy has reduced emissions.
which から air quality までの関係詞節、程度を表す significantly、範囲を示す in urban areas を、いったん外しています。挿入・関係詞・分詞を外すと骨格が見えます。慣れれば頭の中で一瞬ですが、最初は復習のときに実際に線を引いて確認すると効果があります。
見るべきポイントは多くありません。動詞はどれか、その主語はどれか、接続詞や関係詞はどこから始まってどこで終わるか。この3つを追えれば、1級の英文はたいてい崩れません。
段落の役割を考えながら読む
長文を一文ずつ孤立して読んでいると、読み終えたときに「何の話だったか」が残りません。段落ごとに、その段落が全体の中で果たしている役割をラベル付けしながら読むと、設問から本文に戻る速度が変わります。
- 問題提起(何が論点なのかを示す)
- 主張(筆者の立場)
- 根拠(データ、研究、理屈)
- 具体例(主張を分かりやすくする)
- 反論・対比(別の立場、あるいは以前の考え方)
- 結論(まとめ、あるいは今後の見通し)
この役割は、段落の最初と最後の一文に出やすいところです。読み終えたら段落ごとに一言のメモを残しておくと、設問を見た瞬間に「これは3段落目の話だ」と当たりをつけられます。本文を頭から探し直す時間を減らせるため、設問の根拠にも戻りやすくなります。
「読めたのに間違える」内容一致問題
本文はだいたい理解できたのに、選択肢で落とす。1級のReadingでいちばん悔しいパターンです。原因はほぼ決まっています。
本文と同じ語が入った選択肢を選ぶ
本文に出てきた単語が含まれているだけで正しく見えてしまう。作問側はここを狙って、本文の語を使った誤答を置きます。
一部だけ正しい選択肢を選ぶ
前半は本文どおりでも、後半に本文にない条件が足されている。選択肢は最後まで読み切る必要があります。
主語や対象が入れ替わっている
「研究者が主張した」を「政府が主張した」に差し替えるタイプ。誰が何をしたのかを本文で確認します。
程度表現の違いを見落とす
some を most に、may を will に変えた選択肢。断定の強さも本文と一致している必要があります。
本文にない因果関係を選ぶ
「AとBが起きた」としか書かれていないのに、「AがBを引き起こした」と述べる選択肢。
自分の常識で補ってしまう
一般的には正しくても、本文に書かれていなければ不正解です。
判断の基準はひとつだけです。「一般的に正しいか」ではなく「本文に書いてあるか」。迷ったら、その選択肢の根拠になる一文を本文から指せるかを確かめてください。指せないなら選ばない、と決めておくだけで正答率は変わります。
選択肢は単語ではなく意味で照合する
1級の内容一致問題では、本文の表現が選択肢で別の言い方に置き換えられることがあります。そのため、本文と選択肢に同じ単語があるかだけでなく、意味が一致しているかを確認する必要があります。
- 本文
Researchers found that the treatment produced no measurable improvement in patients.
- 正解になりうる選択肢
The treatment was ineffective.
no measurable improvement と ineffective は語としては一致していませんが、この文脈では同じ内容を表しています。本文と同じ語を含む選択肢でも、主語・条件・因果関係などが異なれば正解にはなりません。
単語の一致を探す読み方をしていると、正解を飛ばして誤答を選ぶことになります。選択肢を読んだら、いったん自分の言葉で「要するに何と言っているか」に置き換えてから、本文の該当箇所と突き合わせてください。
時間が足りなくなる原因
「速く読む練習をしましょう」で解決することは、ほとんどありません。時間が足りない人には、たいてい具体的な原因があります。
- 分からない単語のたびに止まる(1回数秒でも、積み重なると数分になります)
- 一文を何度も読み直す(骨格を取らずに読んでいると、毎回同じところで崩れます)
- 全文を同じ密度で精読する(設問に関係しない段落にも同じ時間を使っている)
- 難しい設問に固執する(1問に5分使うより、残りを確実に取るほうが総得点は上がります)
- 語彙問題に時間をかけすぎる(考えて分かる問題と、知らなければ届かない問題の区別がついていない)
とくに最後の1つは1級では効きます。語彙問題は、知っていれば数秒、知らなければ何分考えても正解に届きにくい形式です。選択肢を見て見当がつかなければ、印をつけて先へ進み、長文に時間を残すほうが合理的です。
速読と精読を使い分ける
本番で求められるのは速く処理する力ですが、その力は速読の練習だけでは伸びません。逆に、毎回じっくり読むだけでは時間感覚が育ちません。役割を分けて考えてください。
目的
本番(速く処理する)
設問に答えるために必要な情報を、限られた時間で取り出す
普段の学習(丁寧に読む)
読み違えの原因を特定し、読解の精度そのものを上げる
読み方
本番(速く処理する)
段落の役割を意識して進み、細部は設問に応じて戻る
普段の学習(丁寧に読む)
一文ずつ構造を確認し、分からなかった箇所を残さない
分からない語
本番(速く処理する)
前後から役割だけ取って先へ進む
普段の学習(丁寧に読む)
調べて、用例と一緒に記録する
時間
本番(速く処理する)
測る。時間内に終える練習をする
普段の学習(丁寧に読む)
測らない。かかっても構わない
おすすめは、同じ1題を「時間を測って解く」と「制限なしで精読する」の2回に分けて使うことです。新しい問題を消費せずに、両方の練習ができます。
背景知識はどこまで必要か
1級の長文では、科学・環境・医療・経済・歴史・社会問題・テクノロジーなど幅広いテーマが扱われます。知っているテーマに当たれば読みやすくなるのは確かです。
ただし、背景知識がなければ解けない試験ではありません。設問の答えは本文の中にあり、外部知識で答えるようには作られていません。知識の役割は「答えを出すこと」ではなく「本文の理解を助けること」です。専門的な用語が出てきても、その文章の中で説明されているのが普通なので、まずは本文の説明を拾うことを優先してください。
とはいえ、未知のテーマばかりだと処理速度は落ちます。効率がいいのは、長文演習で出会ったテーマについて、そのつど周辺の知識を少しだけ広げておくことです。テーマ別に知識を先取りするより、読んだ文章を起点に広げるほうが定着します。
長文は「答え合わせ」で終わらせない
解いて、正解を確認して、次の問題へ。これを繰り返してもReadingはあまり伸びません。伸びる人は、間違えた1問について「なぜ間違えたのか」を分類しています。原因が違えば、次にやることも違うからです。
復習で確認したい4つのポイント
① 語彙
知らなかった単語・熟語・コロケーション。意味だけでなく、その語が入っていた一文ごと記録すると定着します。
② 構文
読みづらかった英文。骨格を取り直し、どこで崩れたのかを確認します。
③ 内容
各段落の主張と、段落同士の関係。読んだあとに一言で言えるかを試します。
④ 選択肢
正解の根拠になる本文の一文と、誤答が誤答である理由。ここまでやって1問が終わります。
とくに④は飛ばされがちですが、内容一致問題の得点はここで決まります。「なんとなく合っていた」正解は、次に同じ形で出たときに落とします。正解した問題でも、根拠の一文を指せなかったものは復習対象だと考えてください。
よくある失敗と、その直し方
単語帳だけでReading対策を終える
語彙は土台ですが、土台だけでは建物になりません。覚えた語は、短文で判断する練習と、長文で出会い直す作業を通して初めて試験で使える状態になります。単語帳の周回と長文演習は、並行して進めてください。
分からない単語で毎回止まる
1級の長文で未知語がゼロになることは、まずありません。止まるたびに数十秒使うと、それだけで長文1題ぶんの時間が消えます。まずは前後関係から役割(プラスかマイナスか、何の言い換えか)だけ取って進み、調べるのは復習で。この切り替えを練習してください。
全文を完璧に訳そうとする
訳す作業は時間がかかるうえに、訳せたことと設問に答えられることは別です。本番では主張・対比・因果を追うことを優先し、精読は復習に回してください。
答え合わせだけで終える
正誤を確認しただけでは、次に同じ間違いを防げません。語彙・構文・内容・選択肢の4項目に分類するところまでやって、1題が完了します。
正解の根拠を確認しない
「たぶんこれ」で当たった問題は実力ではありません。正解した問題も含めて、根拠になる一文を本文から指せるかを確認してください。指せない問題が多いなら、正答率のわりに実力は不安定です。
選択肢の単語一致だけで判断する
本文と同じ語が含まれていても、それだけでは正解と判断できません。選択肢は自分の言葉に置き換えてから、意味で本文と照合してください。
時間を測らずに練習する
時間感覚は、測らないと身につきません。1級はライティング2問と合わせて100分なので、リーディングに使える時間には上限があります。1題あたり何分かかっているかを毎回記録してください。
難しい文章ばかり読む
負荷の高い文章だけを読んでいると、精読の練習にはなっても処理速度は上がりません。無理なく読める水準の文章を、量として読む時間も必要です。難易度を選べる教材なら、目的に応じて切り替えてください。
自分の弱点を把握していない
語彙で落としているのか、内容一致で落としているのか、時間切れなのか。分けて記録していないと、次に何をすべきかが決まりません。形式別・原因別に正誤を残しておくと、対策の優先順位は自動的に決まります。
効果的な学習サイクル
1題を、次の7ステップで回してください。新しい問題を増やすより、1題を最後まで使い切るほうが伸びます。
- 1
時間を測って解く
本番と同じ条件で。辞書は使わず、分からない語は推測して進みます。1題にかかった時間も記録します。
- 2
正答率と時間を確認する
何問中何問取れたか、何分かかったかを残します。数字がないと、伸びているかどうかが分かりません。
- 3
間違えた原因を分類する
語彙なのか、構文なのか、論理なのか、選択肢の読み方なのか、時間切れなのか。ここが復習の中心です。
- 4
本文を精読する
今度は時間を気にせず、一文ずつ骨格を確認します。読み違えていた箇所を特定します。
- 5
知らなかった語彙・構文を記録する
単語だけでなく、その語が入っていた一文ごと残します。あとで見返したときに文脈が思い出せます。
- 6
正解・不正解の根拠を確認する
正解の根拠になる本文の一文と、誤答が誤答である理由を言葉にします。
- 7
数日後にもう一度読む
同じ長文を読み直します。音声があれば聞き直したりシャドーイングに使ったりすると、処理速度の練習にもなります。
週に何題という数より、STEP 7まで到達した題数を数えてください。STEP 2で止まっている限り、題数を増やしても同じ原因で落とし続けます。
まとめ
英検1級のReadingは、語彙・構文・論理・処理速度の合計で決まります。点が動かないときは、まずどれで落としているかを分けること。語彙が原因なら短文で判断する練習を、内容一致が原因なら根拠を一文で指す練習を、時間切れなら1題あたりの時間を測るところから始めます。
そのうえで、1題を答え合わせで終わらせない。原因を分類して、精読して、根拠を確認して、数日後にもう一度読む。この1周を丁寧にやるほど、次の1題が速く読めるようになります。
Note
本記事は学習方法をまとめたものであり、合格を保証するものではありません。出題形式・問題数・試験時間の最新情報は日本英語検定協会の公式サイトをご確認ください。「英検」は公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。
参考資料
よくある質問
- 英検1級のリーディングは何問ありますか?
- 短文の語句空所補充が22問、長文の語句空所補充が6問、長文の内容一致選択が7問で、合計35問です。一次試験はリーディングとライティングを合わせて100分、リスニングが約35分です。
- 語彙問題と長文、どちらを優先して対策すべきですか?
- 問題数だけを見れば35問中22問が語彙問題なので、比重は語彙が大きくなります。ただし語彙問題は知識で決まる部分が大きく、長文は読み方を変えることで伸びる余地があります。まずは直近の演習で、どちらの形式で落としているかを分けて記録してみてください。
- 単語帳をやっているのにReadingの点が伸びません。
- 覚えた語を「短文の中で意味を判断する」「長文の中で出会い直す」という段階まで運べていないことが多くあります。単語帳の周回と並行して、短文形式の演習と長文演習を進めてください。また、読めなかった箇所を辞書なしで読み直し、語彙が原因か読解が原因かを切り分ける習慣も有効です。
- 背景知識はどのくらい必要ですか?
- 知っているテーマなら読みやすくなりますが、背景知識がなければ解けない試験ではありません。設問の答えは本文の中にあります。テーマ別に知識を先取りするより、演習で出会った文章を起点に周辺知識を少しずつ広げるほうが効率的です。
- 全文を訳す練習は意味がありますか?
- 本番では全文を訳す必要はありませんが、復習として一文ずつ構造を確認する精読には意味があります。本番の速さは、普段の精読で作った読解の精度に支えられています。時間を測って解く回と、時間を気にせず精読する回を分けるのがおすすめです。